被害者14,000人以上にも及ぶカネミ油症事件(食用油PCB混入事件)
カネミ油性事件とは1968年に西日本を中心に発生した、ライスオイル(米ぬか油)による食中毒事件です。
カネミ油性事件は養鶏場で起きた、カネミ倉庫のダーク油を使った配合飼料を食べた鶏の40万羽もの大量死から始まっています。
ダーク油とは食用油を製造する過程の脱臭工程で分離される脂肪酸を主とした副産物です。
人間への影響も深刻で、同年6月ごろから8月にかけて西日本一帯で吹き出物や内臓疾患などの体調不良を訴える油症患者が続出しました。
同じ食事をとる家族が同時期に発症していたことから同年10月に患者の一人がカネミ倉庫のライスオイルを保健所に提出し、ライスオイルへのPCB混入が明らかになります。
カネミ倉庫では同年1月末から2月にかけて脱臭工程のPCBが異常に減少した際、調査をおこなわず補充して運転を継続し、280kgものPCBをライスオイル中に混入させていました。
さらに混入が判明してから回収したドラム缶3本分のライスオイルを廃棄せず、正常油と混ぜて再脱臭し販売したことで被害は拡大し、患者数は1万4,000人に達しました。
なお患者の健康被害はPCBそのものよりも、PCBが変質して生成されたダイオキシン類による部分が大きいとの説も主張されています。 症状は吹出物、色素沈着、目やになどの皮膚症状に加えて、全身倦怠感、しびれ感、食欲不振などさまざまです。摂取した患者は現在まで長きにわたって深刻な後遺症に悩まされています。
黒い赤ちゃんの原因物質は?
発症した女性から皮膚に色素が沈着した「黒い赤ちゃん」が生まれた事例もあります。妊娠していた女性患者から全身が真っ黒の胎児が産まれ、2週間ほどで死亡するという事件は社会に大きな衝撃を与え、世界中から関心を集めました。
原因は製造過程で混入したポリ塩化ビフェニル(PCB)とされていましたが、後にPCBの加熱によってできるダイオキシン類、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)が主因と判明されています。
カネミ油症の後遺症
カネミ油症は1968年3月ごろから西日本の各地で発生しました。症状は一様でなく、黒い吹き出物、爪の変色、手足のしびれ、全身の倦怠(けんたい)感、内臓疾患など「病気のデパート」と呼ばれるほど多岐にわたります。
また被害者の子どもや孫などにもダイオキシン類による健康被害が発生する次世代被害も深刻です。
2023年現在も事件は終わっておらず、長年体調不良に苦しんでいる人もいます。若い世代にも症状があらわれており、カネミ油症は年代を問わずさまざまな人に悪影響を及ぼしています。
油症とは?
油症とは米ぬかオイル(ライスオイル)の製造過程で、脱臭加熱のために用いられていたPCB(ポリ塩化ビフェタール)がオイルの中に混入し、知らずに摂取して起こったダイオキシン類中毒です。いわゆる「カネミ油症事件」として広く知られています。
ダイオキシンとは?
ダイオキシンとは有機化合物の一種であり、環境中に存在する有害物質です。
「ポリ塩化ジベンゾフラノジオキシン(Polychlorinated dibenzo-p-dioxins)」と呼ばれる化学物質群の総称であり、主に廃棄物の焼却や工業プロセス、天然資源の燃焼など、人為的な活動によって生成および放出されます。
ダイオキシンは化学的に安定しているため寿命が長く、極めて強力な毒性が特徴です。摂取や暴露などによって、人体への深刻な健康被害につながる可能性があります。人体に取り込まれたダイオキシンは脂肪組織に蓄積される傾向があり、長期的な暴露や高濃度のダイオキシンの摂取はあらゆる生理機能に悪影響を及ぼす可能性が高いです。具体的な健康被害としては、発がん性、免疫機能の低下、生殖能力の低下、神経発達への影響などが報告されています。
国際的にもダイオキシンは人体や環境に対する潜在的なリスクが高いと認識されており、多くの国や国際機関がダイオキシンの排出や暴露を規制するための措置を講じています。環境へのダイオキシンの排出量の削減や適切な廃棄物処理などが今後の取り組みとして非常に重要です。